歯科経営
歯科衛生士の人材募集と聞くと、かなり難しい印象を受ける先生が多いと思います。
それもそのはず、2023年度の歯科衛生士の求人倍率は23.3倍まで高くなっているのが現状です。
年々、歯科衛生士の需要が高まるなか、なぜこれほどまでに歯科衛生士の人材募集は難しくなってきているのでしょうか。
今回はその理由について紹介していきます。
厚生労働省の調査によると、1診療所あたりの平均歯科衛生士数は2020年(令和2年)で1.8人という結果が出ました。
ですが、歯科医師1名に対する平均数になるとその数は下がり、わずか1.1人になります。
地域によっても歯科衛生士の人数に差がありますが、東京都では0.9人と1人にも満たない状況です。
多くの先生もご存じだと思いますが、歯科医師1人につき理想的な歯科衛生士の人数は2~3人だといわれています。
そのため平均人数をみても歯科衛生士の人数が少ないことは明白です。
そんなどこもかしこも歯科衛生士の数が揃わない現状に対し、年々歯科衛生士の需要は高まりつつあります。
その理由は予防歯科の発展です。
人々の健康意識が高まるなか、歯科医院は「治療型」から「予防型」へシフトしていくと同時に、歯科衛生士が主とする予防処置の重要性が認知されてきました。
さらに高齢化社会への突入により、口腔ケアを専門とする歯科衛生士の需要も高くなっています。
歯科衛生士という職業は唯一無二であり、ほかで代用できる職業ではないことから、歯科衛生士の存在は非常に貴重であることがおわかりでしょう。
歯科衛生士の需要が高まるなか、どの歯科医院も歯科衛生士を雇いたい気持ちでいっぱいだと思います。
いろんな求人誌やサイトに人材募集の掲載を続ける歯科医院も多いことでしょう。
しかし、どの媒体を使用しても結果につながらない…。
なぜ、歯科衛生士の人材募集はこれほどまでに難しいのでしょうか。
歯科衛生士の人材募集で難しい理由は、冒頭でも触れた有効求人倍率の高さにあります。
23.3倍という倍率を考えると、1人の歯科衛生士を20以上の歯科医院が取り合う計算です。
こうしてみると歯科衛生士は歯科医院を選び放題できる立場になっています。
歯科衛生士の視点からみると、「より条件のいい職場を探そう」という気持ちが大きくなり条件ベースで歯科医院をみてしまうようになるのです。
厚生労働省によると全国の歯科衛生士数が、およそ31万人いるのに対し、就業数が14万5000人という発表がありました。
結果からわかるように、全国にいる歯科衛生士の半分にも満たない人数しか就業していないことになります。
全国の歯科医院数が約7万件ですので、この数を考えると非常に少ないことは明確です。
みなさんは歯科衛生士の人材募集に対して、どのような方法で取り組んでいますか。
多くの歯科医院では、求人誌への掲載や求人サイトを利用していることでしょう。
実は、歯科衛生士の求人方法にも歯科衛生士の人材募集の難しさが関係しています。
その理由が、求人広告の差別化です。
求職者はいろんな求人を目にします。
待遇や職場の雰囲気、設備、場所など自分に合った目線で働きたい歯科医院を探していくのです。
しかし、多くの歯科医院の求人広告を見ていると他院と差があまりなく、記憶に残らないこともしばしば。
求職者からみると、どの歯科医院も大差がないことから「ここで働きたい!」という気持ちにならないのかもしれません。
こうした意味でも求人広告の差別化をしていき、なるべく求職者の目に止まるような意識づくりが必要となります。
では、求職者が目に止まる求人広告とは一体どんな内容のものがいいのでしょうか。
「差別化といってもこれといってウリがない…」
「どこの歯科医院も似たようなものじゃない?」
こう考えている歯科医院は要注意です。
歯科医院を経営するうえで、先生が大切にしている理念はなんですか?
将来的なビジョンはなんですか?
そのビジョンを叶えるために、どんな歯科衛生士に働いてほしいですか?
待遇に差がなくても院長が考える理念やビジョンは歯科医院によってさまざまでしょう。
実は求職者である歯科衛生士も待遇の差を決め手とするよりも最後は理念や意識の方向性などをみて判断する傾向が高いのです。
働くうえで職場の雰囲気や方向性の一致はなによりも大切な判断材料だといえます。
また、目を惹く求人広告の作成も必要です。
みなさんも経験があるかもしれませんが、SNSでおもしろそうなサムネイルを見つけたら思わずクリックしてしまいませんか?
この行動はサムネイルに目が止まったこと、つまり興味を引いたから起きたといえます。
求人広告もサムネイルと原理は同じで、求職者の目を惹くように訴求力の高い求人広告を作成すべきなのです。
このように歯科衛生士の人材募集は、いろんな側面から差別化を図っていく必要があります。
歯科衛生士を獲得するためには試行錯誤を繰り返す必要がありますが、自院の魅力をアピールすることこそが他院との大きな差別化につながります。
さらに求人作成後、自分の目から見て「ここで働きたい」と思えるか想像することも大切です。
求職者の目線に立ち、改めて自院の良いところを探してみるといいでしょう。
〈ライター〉
歯科衛生士:土井
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