2024年診療報酬改定で変わったこととは?

歯科経営

 

2024年6月1日、2年に一度見直される診療報酬改定が行われました。

 

本記事では、診療報酬改定の基本認識や改定内容についてわかりやすく解説します。

 

 

診療報酬は医療の進歩や、経済状況などを踏まえ2年に一度見直しが行われます。

 

また、介護報酬と障害福祉サービス等報酬は3年に1度改定されるため、今年度は6年に1度の3制度の報酬が一斉に見直される「トリプル改定」のタイミングとなり、3つの制度間の調整が行われる可能性が高く、大規模な改定が予想され、施行前から注目されていました。

 

 

1、診療報酬改定の背景

 

①2025年問題

 

 

日本の人口は2008年にピークを迎え、2010年からは急激な人口減少が続いています。

 

2025年には国民の5人に1人が後期高齢者(75歳以上)という超後期高齢化社会を迎えることで、雇用や医療、福祉など社会にもたらす諸問題を2025年問題と言います。

高齢者が増加することで医療・介護サービスの利用者が大幅に増加する一方で、生産年齢人口は減少するためこれらのサービスを支える担い手が不足することが懸念されているのです。

 

 

 

②医療DX令和ビジョン2030

 

 

医療DXとは、医療分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)のことで、単なる医療情報デジタル化を超えて、電子カルテなどの情報やデジタル技術を活用し、医療サービスの提供方法や業務プロセスの変革を指します。

 

 

 

医療DX令和ビジョン2030とは、2021年12月に厚生労働省が策定した医療分野におけるデジタル化の目標と具体的な取組を示したビジョンです。

 

2030年までに、具体的な目標として以下の内容が掲げられています。

・電子処方箋の全面導入

・電子カルテ情報の共有基盤の構築

・オンライン資格確認の範囲拡大

・医療機関の業務効率化

 

このように、今回の2024年の診療報酬改定では、これらの医療を取り巻く課題に対応することが求められています。

 

 

 

2、診療報酬改定の基本認識

 

 

今回の診療報酬改定では、以下の基本認識が提示されています。

 

 

 

①物価高騰・賃金上昇、経営の状況、人材確保の必要性、患者負担・保険料負担の影響を踏まえた対応

 

 

【具体的方向性の例】

・医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取組

・各職種がそれぞれの高い専門性を十分に発揮するための勤務環境の改善、タスク・シェアリング/タスク・シフティング、チーム医療の推進

・業務の効率化に資するICTの利活用の推進、その他長時間労働などの厳しい勤務環境の改善に向けての取組の評価

・地域医療の確保及び機能分化を図る観点から、労働時間短縮の実効性担保に向けた見直しを含め、必要な救急医療体制等の確保

・多様な働き方を踏まえた評価の拡充

・医療人材及び医療資源の偏在への対応

 

 

 

②全世代型社会保障の実現や、医療・介護・障害福祉サービスの連携強化、新興感染症等への対応など医療を取り巻く課題への対応

 

【具体的方向性の例】

・医療DXの推進による医療情報の有効活用、遠隔医療の推進

・生活に配慮した医療の推進など地域包括ケアシステムの深化・推進のための取組

・リハビリテーション、栄養管理及び口腔管理の連携・推進

・患者の状態及び必要と考えられる医療機能に応じた入院医療の評価

・外来医療の機能分化・強化等

・新興感染症等に対応できる地域における医療提供体制の構築に向けた取組

・かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師の機能の評価

・質の高い在宅医療・訪問看護の確保

 

 

③医療DXやイノベーションの推進等による質の高い医療の実現

 

 

【具体的方向性の例】

 

・食材料費、光熱費をはじめとする物価高騰を踏まえた対応

・患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価

・アウトカムにも着目した評価の推進

・重点的な対応が求められる分野への適切な評価(小児医療、周産期医療、救急医療等)

・生活習慣病の増加等に対応する効果的・効率的な疾病管理及び重病化予防の取組推進

・口腔疾患の重病化予防、口腔機能低下への対応の充実、生活の質に配慮した歯科医療の推進

・薬局の地域におけるかかりつけ機能に応じた適切な評価、薬局・薬剤師業務の対物中心から対人中心への転換の推進、病院薬剤師業務の評価

・薬局の経営状況等も踏まえ、地域の患者・住民のニーズに対応した機能を有する医薬品供給拠点としての役割の評価を推進

・医薬品産業構造の転換も見据えたイノベーションの適切な評価や医薬品の安定供給の確保等

 

 

 

④社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和

 

 

【具体的方向性の例】

 

・後発医薬品やバイオ後続品の使用促進、長期収載品の保険給付の在り方の見直し等

・費用対効果評価制度の活用

・市場実勢価格を踏まえた適正な評価

・医療DXの推進による医療情報の有効活用、遠隔医療の推進(再掲)

・患者の状態及び必要と考えられる医療機能に応じた入院医療の評価(再掲)

・外来医療の機能分化・強化等(再掲)

・生活習慣病の増加等に対応する効果的・効率的な疾病管理及び重症化予防の取組推進(再掲)

・医師・病院薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用等の推進

・薬局の経済状況等も踏まえ、地域の患者・住民のニーズに対応した機能を有する医薬品供給拠点としての役割の評価を推進(再掲)

 

 

 

3、か強診(かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所)の変更点について

 

 

今回の診療報酬改定において注目されていたのが、か強診の廃止です。

 

実際は廃止ではなく、従来の「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」という名称から「口腔管理体制強化加算(口管強)」に変わり、算定要件および施設基準の内容も変更されました。

 

施設基準の追加点

 

①過去1年間に歯科疾患管理料(口腔機能発達不全症または口腔機能低下症の管理を行う場合に限る)、歯科衛生実地指導料口腔機能指導加算、小児口腔機能管理料、口腔機能管理料または歯科口腔リハビリテーション料3を合わせて12回以上算定していること。

 

 

 

②以下のいずれかに該当すること

 

ア.過去1年間の歯科訪問診療1、歯科訪問診療2又は歯科訪問診療3の算定回数があわせて5回以上であること。

イ.連携する在宅療養支援歯科診療所1、在宅療養支援歯科診療所2若しくは在宅療養支援歯科病院に依頼した歯科訪問診療の回数があわせて5回以上であること。

ウ.連携する歯科訪問診療を行う別の医療機関や地域の在宅医療の相談窓口とあらかじめ協議し、歯科訪問診療に係る十分な体制が確保されていること。

 

 

 

③当該医療機関に、歯科疾患の重症化予防に資する継続管理(エナメル質初期う蝕管理、根面う蝕管理及び口腔機能の管理を含むものであること。)、高齢者並びに小児の心身の特性及び緊急時対応に関する適切な研修を修了した歯科医師が1名以上在籍していること。

 

 

 

以上、3つの項目が主な追加点となります。

 

 

 

現行のか強診(かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所)においては、かかりつけ歯科医による歯科疾患の管理について施設基準としてかかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所による実施を評価してきましたが、これを見直し、「口腔管理体制強化加算(口管強)」では口腔機能管理に関する実績要検討も満たす診療所による実施を評価することとなりました。

 

 

 

②のウを見ると、『歯科訪問診療に係る十分な体制が確保されていること』とあります。

 

これは訪問診療の実施回数が必須要件ではなくなったと言っても過言ではありません。

 

 

 

「口腔管理体制強化加算(口管強)」の施設基準を満たし、申請を行うことで算定できるようになる加算もあるため、ぜひ貴院でも内容を理解し申請していただければと思います。

 

 

 

<まとめ>

 

今回の診療報酬改定の変更内容を読み解くと、今後の歯科医院の位置づけとして、高齢者の口腔機能低下のフォローだけでなく、小児の口腔周囲筋の発達不全についても歯科でサポートしていくことが求められていることがわかります。

虫歯や歯周病といった口腔疾患だけでなく、歯科医療者の立場から患者さんの全身の健康へとアプローチできることは大きな進歩だと思います。

そのために学ぶべきことは沢山ありますが、医療従事者として頑張っていきましょう!

 

歯科衛生士ライター 古家

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