2026年6月1日に施行された令和8年度診療報酬改定では、在宅歯科医療の評価体系が大きく見直されました。在宅歯科医療推進加算は廃止され、在宅療養支援歯科診療所1・2(歯援診1・2)および在宅療養支援歯科病院(歯援病)に応じた加算へ再編されています。また、歯科訪問診療料4・5には新たな施設基準が設けられ、要件を満たさない場合は所定点数の50%で算定する取扱いが導入されました。
今回の改定では、歯援診1・歯援病で「直近1か月」の実績を見る評価軸が加わった一方、歯援診2や歯科訪問診療料4・5では「過去1年間」を見る要件もあります。医院実務では、月次実績だけでなく、過去1年間のローリング集計を分けて管理することが重要です。
本記事では、厚生労働省の令和8年度診療報酬改定資料、歯科診療報酬点数表、施設基準通知等をもとに、訪問歯科診療を行う医院が確認したい改定内容と院内管理のポイントを整理します。
この記事で整理すること
- 在宅歯科医療推進加算の廃止と、歯援診1・2・歯援病に応じた加算への再編
- 歯科訪問診療料4・5に設けられた施設基準と、要件を満たさない場合の取扱い
- 歯援診1・歯援病に加わった「直近1か月」の実績要件と、歯援診2に追加された臨床研修施設の選択肢
- 訪問歯科衛生指導料、医科連携、栄養連携に関する主な変更
- 「直近1か月」と「過去1年間」を混同しないための院内管理方法
令和8年度改定で在宅歯科医療はどう変わったのか
今回の改定では、単に訪問件数を評価するだけでなく、訪問診療の実施体制、診療時間、医科・介護・栄養職種との連携、口腔機能管理などを含めて評価する方向がより明確になりました。
そのため、在宅歯科医療を継続的に行う医院では、「どの届出区分か」だけでなく、「現在の実績がどの施設基準に対応しているか」「必要な記録・連携体制を維持できているか」を定期的に確認する必要があります。
Point 1|在宅歯科医療推進加算は廃止され、支援体制に応じた加算へ再編
従来の在宅歯科医療推進加算100点は廃止され、令和8年度改定では、在宅療養支援歯科診療所・病院の届出区分に応じて評価する体系へ再編されました。
| 区分 | 加算 |
|---|---|
| 在宅療養支援歯科診療所1(歯援診1) | 100点 |
| 在宅療養支援歯科診療所2(歯援診2) | 50点 |
| 在宅療養支援歯科病院(歯援病) | 100点 |
届出区分によって算定額は変わります。ただし、加算額の差がそのまま医院の利益差になるわけではありません。必要な人員、訪問時間、教育、連携体制などの運用コストも含め、自院に適した体制を検討することが重要です。
Point 2|歯科訪問診療料4・5には施設基準が新設
歯科訪問診療料4・5では、歯援診1・2または歯援病の届出を行っていない医療機関について、歯科訪問診療料の注7に規定する施設基準を満たしているかどうかが算定に影響します。該当する施設基準を満たさない場合、歯科訪問診療料4・5は所定点数の50%で算定します。
注7の施設基準で確認したい主な実績
- 過去1年間に、歯科訪問診療料1または2を合計12回以上算定していること
- 過去1年間に、患家または入院患者に対する歯科訪問診療の実績が合計6回以上あること
- 福祉型・医療型障害児入所施設、介護老人福祉施設、介護老人保健施設での定期的な歯科健診への協力、都道府県等が実施する事業への協力、学校歯科医等の業務のいずれかに該当すること
- 歯科訪問診療の実施状況等を把握でき、必要に応じて他の保険医療機関・介護保険施設等・障害児入所施設等の担当者へ治療内容や治療計画を共有できる体制を確保していること
重要:歯科訪問診療料の注7に規定する施設基準は、基準を満たしていればよく、この基準自体について地方厚生(支)局長へ個別に届出を行う必要はありません。歯援診1・2・歯援病の届出とは分けて考える必要があります。
したがって、「届出状況だけ」を確認するのでは不十分です。歯援診等の届出状況と、注7の施設基準を満たしているかという実績確認を別々に管理してください。
Point 3|歯援診1・歯援病に「直近1か月」の評価軸が追加。歯援診2では臨床研修施設の要件を追加
歯援診1:直近1か月の実績を用いる選択肢が追加
歯援診1では、従来の年間実績に加え、実績・教育に関する要件として、直近1か月の実績等を用いる選択肢が追加されています。主な選択肢には次のようなものがあります。
- 直近1か月に歯科訪問診療料1・2・3を合計10回以上算定していること
- 直近1か月に歯科訪問診療料2~5を合計5回以上算定し、そのうち診療時間20分以上の割合が60%以上であること
- 直近1か月に在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料または小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料を合計5回以上算定していること
- 歯科医師臨床研修施設として研修歯科医を受け入れ、歯科訪問診療の教育を行っていること
歯援診2:「直近1か月」に一括変更されたわけではない
歯援診2まで「直近1か月」の要件になったと理解するのは不正確です。歯援診2では、実績・教育に関する要件の選択肢として、過去1年間に歯科訪問診療料1・2・3を合計4回以上算定する要件に加え、研修歯科医を受け入れて歯科訪問診療の教育を実施する歯科医師臨床研修施設という選択肢が追加されています。
歯援病:年間実績と直近1か月の評価軸が併存
歯援病についても、実績・教育に関する要件では、過去1年間の歯科訪問診療料1・2・3の算定件数と、他の保険医療機関からの要請により歯科訪問診療での治療が困難な患者を受け入れた実績の合計18回以上という選択肢に加え、直近1か月に歯科訪問診療料2~5を5回以上算定し、そのうち20分以上の割合が60%以上であること、直近1か月に在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料等を合計10回以上算定していること、歯科医師臨床研修施設であること、といった選択肢が設けられています。
施設基準の判定では、「直近1か月」と「過去1年間」のどちらを確認する要件なのかを区別することが重要です。医院内では、月次実績と過去12か月のローリング集計を別々に持つと確認しやすくなります。
Point 4|訪問歯科衛生指導料は380点・330点・260点へ
歯科訪問診療料を算定した患者に対する訪問歯科衛生指導料は、令和8年度改定で次のように見直されました。
| 区分 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| 1人 | 362点 | 380点 |
| 2~9人 | 326点 | 330点 |
| 上記以外 | 295点 | 260点 |
特別の関係にある施設等に入居・入院する患者に対する訪問歯科衛生指導料は140点です。人数区分によって改定の方向が異なるため、訪問先ごとの患者数と算定区分を確認しておく必要があります。
Point 5|医科連携・栄養連携の評価も拡充
医科連携訪問加算:500点
歯科を標榜していない病院からの依頼に基づき、入院患者の口腔状態に問題があり医科診療に支障を来している患者等に対して歯科訪問診療を行う場合、所定の要件を満たせば医科連携訪問加算500点を算定できます。原則として、初回の歯科訪問診療時に1回算定する取扱いです。
算定には、依頼を受ける方法をあらかじめ連携医療機関と定めていること、依頼文書の写しを診療録に添付すること、患者の同意を得て口腔管理内容等を依頼元へ情報提供することなどの条件があります。施設内掲示やウェブサイトへの掲載に関する施設基準も確認してください。
口腔管理連携加算:600点
医科点数表側では、歯科を標榜していない保険医療機関が連携歯科医療機関へ手配を行い、入院患者が歯科診療を受けた場合の口腔管理連携加算600点が新設されています。算定は入院中1回です。歯科側の医科連携訪問加算と同じ項目ではないため、算定主体を分けて理解してください。
在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料4:100点
在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料4は100点で、月1回の算定です。対象は単に「在宅療養中」であればよいわけではなく、自宅で療養している患者で、歯科疾患在宅療養管理料、在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料または小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料を算定していることが前提です。
改定では、カンファレンス、食事観察、会議等および口腔機能等に係る指導について、ビデオ通話が可能な機器を用いて参加できる取扱いが示されています。なお、在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料1~4は、口腔機能実地指導料を算定している月には算定できません。
医院経営への影響|届出区分と施設基準の充足状況が算定額に影響する
在宅歯科医療では、届出区分や施設基準の充足状況によって請求できる点数が変わります。一方、算定額の増加と利益の増加は同義ではありません。訪問件数を増やす場合には、歯科医師・歯科衛生士の稼働、人件費、移動時間、連携業務、記録作業まで含めて判断する必要があります。
実績管理は「月次」と「過去1年間」を分ける
令和8年度改定後は、すべての施設基準が月単位になったわけではありません。直近1か月の実績を見る基準と、過去1年間の実績を見る基準が併存しています。
実務上は、毎月の実績を締めた時点で「直近1か月の集計」と「過去12か月のローリング集計」を更新し、どの要件にどのデータを使うのかを院内で明確にしておく方法が安全です。
診療時間の記録方法を統一する
歯援診1・歯援病の一部の実績要件では、「診療時間20分以上の歯科訪問診療が60%以上」という評価軸があります。開始・終了時刻や診療時間の記録方法がスタッフごとに異なると、後から実績を確認しにくくなります。
患者数だけで訪問歯科衛生指導を判断しない
訪問歯科衛生指導料は人数区分によって点数が異なりますが、臨床上必要な指導を適切に行うことが前提です。点数だけを基準に訪問計画を組むのではなく、患者の口腔状態、必要な指導内容、訪問先の体制を踏まえて運用してください。
医院が行う実務チェック5ステップ
- 現在の届出区分を確認する
歯援診1・歯援診2・歯援病のいずれかを届け出ているか、届出内容と現在の体制が一致しているかを確認します。 - 直近1か月と過去1年間を別々に集計する
直近1か月の訪問件数・20分以上の割合・口腔リハビリテーション関連実績と、過去1年間の歯科訪問診療実績等を分けて管理します。 - 診療時間・緊急訪問の記録ルールを統一する
同一建物の1人を訪問中に、同じ建物の別患者から緊急の求めがあり、必要性を認めて訪問した結果2人となった場合は、所定の取扱いにより双方に歯科訪問診療料1を算定できる場合があります。この場合、緊急に訪問した理由を診療録に記載します。 - 医科・介護・栄養との連携経路を明文化する
依頼方法、連絡先、文書の保管、患者同意、情報提供の方法を院内で共有します。 - 毎月、施設基準と算定実績を照合する
月次集計と過去12か月集計を更新し、施設基準、届出内容、算定実績に不整合がないかを確認します。
経過措置・届出の確認:令和8年度改定では、改正前から歯援診1・2・歯援病の届出を行っている医療機関について、届出時点や施設基準の項目に応じた経過措置があります。再届出を要しない取扱いがある場合でも、改定後の施設基準の確認、定例報告・自己点検まで不要になるわけではありません。自院の従前の届出状況に応じ、所轄の地方厚生(支)局の最新案内を確認してください。
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まとめ|「直近1か月」と「過去1年間」を分けて管理する
令和8年度改定では、在宅歯科医療の評価が、届出区分、訪問実績、診療時間、多職種連携などを組み合わせて確認する体系へ再編されました。特に注意したいのは、歯援診1・歯援病の一部で「直近1か月」の実績を見る一方、歯援診2や歯科訪問診療料4・5に関係する施設基準では「過去1年間」を見る要件があることです。
医院では、月次実績と過去12か月のローリング実績を分けて集計し、届出区分、施設基準、診療録、連携記録を定期的に照合してください。算定可否は患者ごとの状況や他の算定項目との関係でも変わるため、最終的には最新の告示・通知・疑義解釈および所轄の地方厚生(支)局の案内を確認することが重要です。
よくある質問
Q. 在宅歯科医療推進加算100点は残っていますか?
A. 令和8年度改定で廃止され、歯援診1・歯援病100点、歯援診2 50点という支援体制に応じた加算へ再編されています。
Q. 歯科訪問診療料4・5は、歯援診の届出がなければ必ず50%になりますか?
A. いいえ。歯援診1・2・歯援病の届出がない場合でも、歯科訪問診療料の注7に規定する施設基準を満たしていれば、直ちに50%となるわけではありません。該当する施設基準を満たさない場合に50%となります。
Q. 歯科訪問診療料4・5の注7の施設基準は、地方厚生局へ別途届出が必要ですか?
A. この基準自体は、基準を満たしていればよく、地方厚生(支)局長への個別の届出は不要とされています。ただし、実際に基準を満たしていることを確認できる院内管理は必要です。
Q. 歯援診2も「直近1か月」の実績だけで判定しますか?
A. いいえ。歯援診2では、過去1年間の歯科訪問診療実績を用いる要件があり、令和8年度改定では歯科医師臨床研修施設という選択肢が追加されています。歯援診1・歯援病の一部の「直近1か月」要件と混同しないよう注意が必要です。
Q. 訪問歯科衛生指導料の3区分目は295点から260点で合っていますか?
A. はい。令和8年度の歯科診療報酬点数表では、訪問歯科衛生指導料は380点、330点、260点です。
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参考資料
情報の最終確認日:2026年9月7日。厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」に掲載された資料および2026年9月2日公表の疑義解釈資料まで確認しています。
- 厚生労働省|令和8年度診療報酬改定について
- 厚生労働省|歯科診療報酬点数表
- 厚生労働省|令和8年度診療報酬改定の概要(歯科)
- 厚生労働省|特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年度改定・訂正版)
- 九州厚生局|令和8年度診療報酬改定に伴う施設基準の取扱い
本記事は制度の概要を整理したもので、個別症例の算定可否を保証するものではありません。実際の算定・届出にあたっては、最新の告示、通知、疑義解釈、地方厚生(支)局の案内をご確認ください。
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