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矯正治療には欠かせないアングルの分類。
矯正治療をされない先生やスタッフの方々からすると、忘れてしまった単語かもしれません。
しかし、矯正を専門にしない先生でもアングルの分類を認識することは、治療をするうえで非常に大切です。
今回は、いまさら聞けないアングルの分類について詳しく解説します。
アングルの分類とは
アングルの分類とは、噛み合わせの診断に必要な指標のことです。
いまから約125年前の1899年、アメリカの有名な矯正医であるEdward H. Angle先生によって提唱されました。
アングル先生は第一大臼歯を咬合の中心と見ており、なかでも上顎第一大臼歯の位置普変説を唱えたとされています。
そのため、第一大臼歯の噛み合わせが正常でなければ「噛み合わせが悪い=不正咬合」と判断されるわけです。
アングルの分類を種類別で覚えよう
では、実際にアングルの分類に、どのような種類があるか見ていきましょう。
⚫️アングルⅠ級
上顎第一大臼歯と下顎第一大臼歯が正常に噛み合う状態をⅠ級とします。
頬側から見ると、上顎第一大臼歯の近心頬側咬頭の三角隆線と下顎第一大臼歯の頬面溝が咬合しています。
一方で、舌側は上顎第一大臼歯の近心舌側咬頭が下顎第一大臼歯の中央窩に咬合した状態です。
このⅠ級の咬合状態を正常と判断します。
⚫️アングルⅡ級
Ⅱ級は、いわゆる「出っ歯」を示します。
Ⅱ級1類とⅡ級2類に分けられていますが、どちらも下顎遠心咬合です。
◆アングルⅡ級1類
頬側から見ると、上顎第一大臼歯に比べて下顎第一大臼歯が半咬頭以上遠心にあるのがわかります。
また、上顎前歯が唇側に傾斜したり転位したりする状態です。
◆アングルⅡ級2類
2類も1類同様、上顎第一大臼歯に比べて下顎第一大臼歯が半咬頭以上遠心にあります。
しかし1類と異なるのは、上顎前歯が後退を伴う点です。
⚫️アングルⅢ級
Ⅲ級は、「受け口」といわれる状態です。
下顎近心咬合になっており、上顎第一大臼歯に比べて下顎第一大臼歯が半咬頭以上近心側にある状態を示します。
アングルⅠ級が正常咬合とされる理由
アングルⅠ級が正常咬合である理由は、上顎第一大臼歯と下顎第一大臼歯の咬合面積が最大になるからです。
Ⅱ級Ⅲ級では噛み合わせの面積が小さいため、これらの問題を改善する必要があります。
そのため矯正治療では、アングルⅠ級が到達地点となるのです。
アングルⅠ級を正常咬合だと説明しましたが、理想の咬合状態はⅠ級だけではありません。
ほかにも理想的な咬合を示す指標がありますので、紹介します。
⚫️オーバージェット
オーバージェットとは、上下前歯の噛み合わせの位置関係を示すものです。
正常の状態だと、上顎中切歯が下顎中切歯よりも2~3mm前に位置します。
この上下前歯の距離が大きくなればなるほど、出っ歯になってしまいます。
⚫️オーバーバイト
オーバーバイトは、歯の噛み合わせの深さを示しています。
こちらも理想的な数値は2~3mmだといわれており、水平方向、垂直方向ともに2~3mmが理想値です。
また、深く噛み込む状態をディープバイト、奥歯は噛んでいるにもかかわらず前歯が噛み合っていない状態をオープンバイト(開咬)といい、どちらも理想的な咬合状態とは呼べません。
このように、大臼歯だけではなく前歯の条件も揃った状態を理想の噛み合わせだと判断します。
不正咬合を放置すると、さまざまなリスクが出てきます。
特にアングルⅡ級やⅢ級は、歯列不正が原因で適切なブラッシングが難しくなることでしょう。
プラークや歯石などが溜まってしまうと、それこそカリエスや歯周病のリスクが生じます。
私たち歯科関係者にとって、患者の口腔を守ることは使命だといえます。
プロケアだけに限らず、ホームケアの大切さを伝えることも重要です。
さらに不正咬合からくるリスクを伝え、矯正治療を勧めることも患者の口腔を守るために必要な行動ではないでしょうか。
歯科衛生士ライター
土井 万喜子