予防歯科を発展・定着させるために必要な3つのステップ

ORTC Online, コラム

予防歯科に力を入れたいと考える先生は多いはずです。

 

以前の日本の歯科業界は、目の前の病気を治療することを目的とした「治療型」が主流でした。

しかし、近年では病気を予防することに焦点をおく「予防型」へ考え方が移行しており、施策も変化しています。

 

もっとも予防歯科を発展・定着させるためには、仕組み化が必要です。

そこで今回は、予防歯科を定着させるために必要な3つのステップをご紹介しましょう。

 

予防歯科の確立

そもそも予防歯科のはじまりは、1970年代にスウェーデンが打ち出した施策にあります。

口腔疾患と歯科治療、そしてセルフケアの調査をおこなった結果、むし歯予防にはプロケアとセルフケアの両方が必要だと発表したのです。

 

それ以降、予防歯科への関心が高まり、国全体を通じて予防歯科が発展していきました。

国の施策として、国民のすべてが定期的に保健指導や治療を受けられる仕組み化を導入し、20歳未満の国民の受診は無料にするなど、大々的に予防歯科を取り入れたのです。

その結果、予防歯科に取り組むスウェーデン国民の意識は高くなり、QOLの向上も認められました。

 

日本もスウェーデンほど予防歯科が発展しているわけではありませんが、少しずつ法律や条例を打ち出し、予防歯科の発展のために動き出しています。

 

しかし、予防歯科を取り入れ、定着させるためには施策も必要です。

ここからは予防歯科を定着させるために必要な施策について考えていきましょう。

 

予防歯科導入に向けた施策3選

予防歯科導入の施策1 患者層の把握と分析、方針の決定

予防歯科といっても、年代別によってメニューが異なります。

また、地域性も同時に考慮することを忘れてはいけません。

来院される患者層の最も多い年代をターゲットに設定し、提供するメニューを決めていきましょう。

 

小児:う蝕・歯肉炎予防 

成人:う蝕・歯周病予防

壮年:う蝕・歯周病予防、歯牙保存

高齢:口腔機能維持・改善

 

予防歯科導入の施策2 歯科衛生士の確保と教育

予防歯科には歯科衛生士の存在は欠かせません。

メンテナンスやリコール人数を増やそうとした場合、まずは歯科衛生士の確保が必要になります。

歯科衛生士にとって、予防歯科はやりがいのある仕事だといえます。

昨今、歯科衛生士不足が懸念されていることから、歯科衛生士の確保が難しいと考える先生も多いのではないでしょうか。

 

なぜ、歯科衛生士の離職が目立つのか。

それは、歯科医師が歯科衛生士の仕事を理解していないからです。

 

たとえば、治療型の歯科医院の場合、いくら歯科衛生士が患者に予防の大切さを訴えても、歯科医師が治療型の考えでいたら、医院全体の予防意識は薄らいでしまいます。

歯科衛生士の本来の目的は「患者の健康を守り、維持していく」こと。

予防ができない医院に対し、やりがいを見つけることは到底難しいのです。

 

ですが、歯科医師が予防歯科に対する意識が強いと、歯科衛生士もやりがいを求めるようになります。

患者のため、医院のため、そして歯科衛生士のため。

すべてにおいて理解を示し、そして取り組める医院こそ、歯科衛生士が集まってくるようになるのです。

 

歯科衛生士の確保が実現できれば、教育も取り入れていきます。

コミュニケーションの基礎や知識、技術など、スタッフは一貫して同じレベルであるようにスキルアップが必要です。

 

患者にとって歯科衛生士は良きアドバイザーという存在でいる必要があります。

患者の話を聞き、寄り添い、そして予防に対する意識づけをおこなうことで、予防へのモチベーションが上がっていくのです。

 

そのため、予防歯科を発展・定着させるためには、歯科衛生士の存在が必要不可欠だといえるでしょう。

 

予防歯科導入の施策3 患者教育

予防歯科を発展・定着させるためには、患者教育にも力を入れる必要があります。

患者にとって、健康でありたいと願う気持ちは共通認識です。

 

しかし、「健康=歯の大切さ」を理解している患者はどれくらいいるでしょうか。

そして歯の大切さからメンテナンスの重要性を理解している患者はどれくらいいるでしょうか。

 

なぜメンテナンスが必要なのか、どのようなケアをすべきなのか、歯科医師や歯科衛生士は患者一人ひとりの事情や背景を考慮しながら、予防の大切さを教育していく必要があります。

そのためにも円滑なコミュニケーションが重要です。

 

患者の歯の健康意識を高める教育も立派な予防歯科につながるといっていいでしょう。

 

予防歯科を発展・定着させるためには医院全体が同じ意識でいること

予防歯科を発展・定着させるためには、院長だけががんばっても難しいことが理解できたかと思います。

歯科衛生士や歯科助手、受付、そして先生は同じチームの一員として、医院全体が予防に対する意識を高めることが必要です。

そのためには、医院の目標やビジョンを伝え、協力を得るようにしましょう。

チームの連携がとれていないと、新たな取組みに対して反発されかねません。

そうならないためにも、定期的なスタッフとのミーティングや面談など、コミュニケーションを取り入れることが先決です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歯科衛生士ライター
土井 万喜子

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