講師紹介 稲山未来

- 稲山未来
- Kery栄養パーク
- 代表 管理栄養士
- 栄養士養成校を卒業後、特別養護老人ホームで調理に携わりながら管理栄養士の国家資格を取得。給食管理や栄養管理に加え、看取り期の食支援にも深く関わり、高齢者が“最期まで食べる”ことを支える重要性を学んだ。 さらに、食事だけでなく生活全体を支えるため介護支援専門員資格を取得し、包括的なケアに取り組んできた。
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管理栄養士の訪問栄養食事指導を始めたい歯科医院や管理栄養士
歯科訪問診療と連携する管理栄養士
低栄養リスクのある患者を多く診る歯科医師
訪問栄養食事指導の算定要件とプロセスを学びたい方
本動画は、管理栄養士が実施する居宅療養管理指導(訪問栄養食事指導)における算定要件として定められている栄養ケアプロセス(NCP)の流れを徹底解説します。これは、在宅だけでなく、病院や施設での栄養指導にも応用される国際的な標準プロセスです。
管理栄養士による居宅療養管理指導(訪問栄養食事指導)は、単に食事の助言を行うだけでなく、算定要件として厳格なプロセスが定められています。その中心となるのが、栄養指導の国際的に標準化された流れである栄養ケアプロセス(NCP:Nutrition Care Process)です。NCPを実践することで、栄養課題を抱える在宅患者に対し、エビデンスに基づいた計画的かつ継続的な介入が可能となります。
まず、「スクリーニング」で集団の中から栄養不良のリスクが高い対象者を抽出します。在宅現場では、過去3ヶ月間の体重変化や食事量、BMIなどを評価するMNA-SF(Mini Nutritional Assessment Short Form)がよく用いられます。BMIが測定できない寝たきりの方には、ふくらはぎ周囲長による代用指標を用いる工夫も紹介されています。次に「アセスメント」で、身体計測値、生化学データ、食習慣などの多様なデータを収集・分析し、現時点の栄養状態と解決すべき課題を明確化します。
アセスメントで収集した情報に基づき、対象者の栄養課題を特定します。この段階は、医師が病気を診断するのと同様に、栄養に関する問題を明確にするフェーズです。栄養診断コード(例:たんぱく質摂取量不足など)を用いて、問題(P:Problem)、原因(E:Etiology)、根拠(S:Signs/Symptoms)を標準化された形式(PES報告書)で記述し、多職種間で共通理解を図ります。
栄養診断に基づいて、具体的な「栄養介入計画」を策定します。栄養摂取、知識、行動変容、環境整備などの面から、対象者のニーズに合わせた指導内容をプランニングします。策定した計画は、必ず利用者やその家族に説明し、同意を得ることが算定要件上の必須項目です。計画に実行上の問題が生じた場合は、速やかに計画を修正することも義務付けられています。
計画に基づいて「介入」を実施した後、「モニタリング」で目標達成度を定期的にチェックします。特に、約3ヶ月を目処に栄養スクリーニングを再度実施し、低栄養リスクを再評価して計画を見直します。最終的に「評価」の段階で、介入による栄養状態の変化を総合的に判定し、課題が解決すれば栄養指導を終了(終結)とします。課題が継続する場合は、新たな課題としてプロセスを再開します。
また、算定要件では、食生活に関する配慮が必要な場合、「指示を行った医師を通じて介護支援専門員(ケアマネジャー)に情報提供を行う」ことがルール化されています。これは、訪問栄養食事指導が介護保険サービスの一環として提供される上で、ケアプラン全体との整合性を図るために非常に重要な連携プロセスです。
この一連のNCPの流れを正確に理解し、実行することが、質の高い在宅栄養管理と、それに伴う確実な介護報酬の算定に繋がります。
